睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)は、寝ている間に
- 呼吸が止まる(無呼吸)
- 呼吸がとても弱くなる(低呼吸)
状態が何度も繰り返される病気です。多くの場合、いびきが強くなったり、いびきが急に止まった後に苦しそうな呼吸をするのが特徴です。
大きく3つのタイプがあります。
のどの奥の空気の通り道(上気道)が、いびきとともに狭くなったり、閉じてしまうタイプで、最も多いタイプです。
脳から「息をしなさい」という指令がうまく出なくなるタイプです。
上の2つが混ざったタイプです。
日本人では、とくにOSAが多く、成人の約2割が潜在的にかかっていると言われています。
上記のいずれかを放置すると、
- 日中の強い眠気
- 集中力低下、仕事や勉強の能率低下
- 頭痛やイライラ
だけでなく、長期的には
- 高血圧
- 心筋梗塞・不整脈などの心臓病
- 脳梗塞・脳出血(脳卒中)
など、命に関わる病気のリスクも高くなることが分かっています。
そのため、「ただのいびき」と思わず、早めの検査と治療が大切です。
1. 寝ている間の特徴(家族に指摘されやすいサイン)
ご本人は気づきにくいのですが、次のような「いびき」や呼吸の変化がよく見られます。
- いびきが非常に大きい、毎晩続く
- いびきをかいていて、急にいびきが止まる(その間、呼吸が止まっている)
- しばらくして「ゼーゼー」「ガーッ」とあえぐように息をし始める
- 寝相が悪く、何度も寝返りをうつ
- 寝汗をかきやすい、苦しそうに寝ている
ご家族から
「いびきが前よりひどくなった」
「いびきが急に止まって、しばらく呼吸していないように見える」
と言われた場合は、睡眠時無呼吸症候群が強く疑われます。
いびきや無呼吸により睡眠の質が悪くなるため、日中に次のような症状が出やすくなります。
- 強い眠気、居眠り
会議、授業、テレビ視聴中にウトウトする
運転中に眠くなってヒヤッとしたことがある
- 集中力・記憶力の低下
仕事の能率が落ちる、ミスが増える
物忘れが増えたと感じる
- 朝の頭痛やだるさ
- イライラしやすい、気分が落ち込みやすい
- 口呼吸・口の渇き
- 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
中には、いびきや無呼吸があっても、日中の自覚症状が目立たない「無症候性」の場合もあります。
そのため、「日中の眠気があまりないから大丈夫」と自己判断せず、気になるいびきがあれば一度ご相談ください。
いびきの多くは、のどの空気の通り道が狭くなって震えることで起こります。OSAでは、さらにその通り道が閉じてしまい、無呼吸を起こします。主な原因は次の通りです。
- 肥満・首まわりの脂肪
首が太い、体重増加により気道が狭くなり、いびきや無呼吸が起こりやすくなります。
- 扁桃腺や舌の大きさ
扁桃腺が大きい、舌の付け根(舌根)が大きいと、いびきや無呼吸の原因になります。
- あごの形(小さい下あごなど)
下あごが小さい・後ろに引っ込んでいると、のどが狭くなり、いびきが出やすくなります。
- 鼻づまり(アレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲など)
鼻が詰まると口呼吸になり、いびきが悪化し、気道が閉じやすくなります。
- 生活習慣
過度の飲酒(とくに寝る前のお酒)は、のどの筋肉をゆるめていびき・無呼吸を悪化させます。
喫煙は気道の炎症を起こし、いびきの悪化につながります。
強い疲労や睡眠不足も、いびきや無呼吸を増やします。
2. 中枢性睡眠時無呼吸(CSA)と複合性(MSA)の原因
- 心不全、脳卒中など、心臓や脳の病気
- 一部の薬(鎮静薬など)
が関係することがあり、脳から呼吸の指令がうまく出ないタイプです。
OSAとCSAが両方起こっている場合を複合性睡眠時無呼吸と呼びます。
原因は人それぞれですので、「いびきが原因かどうか」「どのタイプか」を確認するためにも、検査が欠かせません。
まずは、
- いびきの状態(いつから、どのくらいの頻度・大きさか)
- 睡眠中の呼吸の止まり方(家族からの情報も重要です)
- 日中の眠気の程度
- 既往歴(高血圧、糖尿病、心臓病など)
を伺い、鼻やのど(扁桃腺、舌の付け根)の状態も耳鼻咽喉科的に詳しく診察します。
睡眠の状態を客観的に調べるため、次のような検査を行います。
【自宅で行う簡易睡眠検査】
- ご自宅で小型の機械を装着して寝ていただき、「呼吸の状態」「血中酸素濃度」「脈拍」「いびき」などを記録します。
- 仕事や家庭の都合で入院が難しい方や、初期評価に適しています。
- ただし、睡眠の深さ(睡眠段階)などの情報は限定的です。
【自宅で行う精密検査(終夜ポリソムノグラフィー:PSG)】
- 「病院泊まり込みは避けたいが、もう少し詳しく調べたい」という方に、自宅で使える検査機器をレンタルして検査を行う方法もあります。・睡眠の深さやリズム、いびきや無呼吸の原因を詳しく調べることができます。
必要に応じて、血液検査や心臓の検査、鼻・のどの内視鏡検査などを追加し、いびきや無呼吸の原因と重症度を総合的に判断します。
CPAP療法とは? ―いびきと無呼吸を防ぐ代表的な治療―
CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)は、睡眠時無呼吸症候群の標準的な治療法です。
鼻(または鼻と口)にマスクをつけ、そこから一定の圧力の空気を送り込むことで、寝ている間ものどの空気の通り道を広げ、いびきを抑え、無呼吸や低呼吸を防ぐ治療です。
CPAPを適切に使うと、
- 夜間のいびきがほとんどなくなる
- 日中の眠気が軽くなる
- 血圧や心臓・脳の負担が減る
ことが期待できます。
日本の保険診療では、睡眠時無呼吸症候群の検査でAHI(無呼吸低呼吸指数)が「簡易検査で40以上」または「精密検査(PSG)で20以上」の場合にCPAPが保険適用されます。
※実際の適応や機種選択は、検査結果、症状、生活スタイルを総合的に判断して決定します。
- マスクのフィット感がとても重要です。
サイズや形が合わないと、空気漏れや違和感が出て、いびきが残ったり、眠りにくくなります。
- 鼻づまりがある場合は、鼻炎治療や鼻スプレーを併用することで、つけ心地が大きく改善します。
- 機器やホース、マスクは定期的な清掃が必要です。
- 慣れるまでに数週間かかることもありますが、当院でフォローしながら調整していきます。
いびきや無呼吸の背景に「肥満」や「生活習慣」が関わっていることが多いため、次のような改善が基本となります。
- 適正体重の維持(減量によりいびきが軽くなることもあります)
- 規則正しい睡眠リズム
- 適度な運動(ウォーキングなど)
- 禁煙
- 寝る前のアルコールを控える(とくに多量飲酒は、いびきを悪化させます)
- 仰向け寝を避け、横向きで寝る工夫(いびきが軽くなる場合があります)
- アレルギー性鼻炎などによる鼻づまりがある場合、点鼻薬や飲み薬で鼻の通りを良くすると、いびきが軽減し、睡眠の質が上がることがあります。
- 扁桃腺肥大や、鼻中隔が大きく曲がっている場合は、手術を行うことでいびき・無呼吸が改善するケースもあります。
- 中枢性睡眠時無呼吸(CSA)の場合は、心臓や脳など、背景疾患の治療や薬物療法が中心になることがあります。
【口腔内装置(マウスピース)】
- 歯科で作製する装置で、下あごを少し前に出すことで、のどの気道を広げ、いびきや軽度〜中等度の無呼吸を改善する方法です。
- CPAPがどうしても続けにくい方の代替案となる場合もあります。
【外科的治療】
- 扁桃腺摘出術
- 軟口蓋形成術(口蓋垂・軟口蓋を整えて気道を広げる手術)
- あごの骨を前方に移動する手術
など、個々の解剖学的特徴に合わせた手術が検討されます。
治療法は一つに限らず、CPAP・マウスピース・減量・鼻炎治療などを組み合わせて、それぞれの患者さんに合った方法を一緒に考えていきます。
睡眠時無呼吸症候群を治療する目的は、「いびきや眠気を減らすこと」だけではありません。
- 高血圧
- 糖尿病
- 心臓病(心筋梗塞、不整脈、心不全など)
- 脳卒中
といった病気の予防・悪化防止にもつながります。
CPAP療法や生活習慣改善を続けることで、
- 血圧コントロールが良くなった
- 朝の頭痛や日中の眠気が減った
という方も多くいらっしゃいます。
そのため、定期的な受診と長期的なフォローアップがとても大切です。
- 静かで暗い寝室(光をしっかり遮る)
- 適度な室温と湿度(エアコン・加湿器の活用)
- 枕の高さを調整し、首に負担の少ない姿勢で寝る
- 寝具を清潔に保つ(ハウスダスト・ダニ対策)
- 軽い有酸素運動(ウォーキングなど)を習慣化し、体重管理と睡眠の質向上を目指す。
- 夕方以降の激しい運動は避け、寝る前はストレッチや入浴などリラックスできる時間にする。
- 寝る直前のスマートフォン・パソコンは控えめにし、ブルーライトを減らす。
- 喫煙と過度の飲酒はいびきを悪化させるため、できるだけ控えましょう。
- 機器やマスクの定期的な清掃
- 鼻の乾燥が気になる場合は、加湿器の使用や、保湿剤の相談
- マスクの空気漏れや違和感がある場合は、我慢せずにご相談ください。
- 体調の変化(風邪、鼻づまりの悪化、体重増減など)でいびきや無呼吸の状態も変わるため、気になる変化があれば早めに受診してください。
次のような場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。早めに受診をご検討ください。
- いびきが急に大きくなった、または毎晩続く
- ご家族から「寝ている時に呼吸が止まっている」と指摘された
- 日中、強い眠気や居眠りが続く
- 朝の頭痛・だるさがなかなか取れない
- 高血圧・糖尿病・心臓病・脳卒中の既往があり、最近いびきがひどくなった
CPAP療法を開始した場合は、
- マスクが合っているか
- 送気圧が適切か
- いびきや無呼吸がどの程度改善しているか
を定期的に確認しながら、機器設定や鼻のケアを調整します。治療効果を維持するためには、治療の継続と定期受診が欠かせません。
睡眠時無呼吸症候群は、「いびき」や「眠気」の問題にとどまらず、長期的には高血圧や心臓病、脳卒中など、命に関わる病気につながることのある重要な病気です。
しかし、適切に検査・診断を行い、CPAP療法をはじめとする治療や生活習慣の改善を行うことで、
- いびきの改善
- 日中の眠気の改善
- 将来の合併症リスクの軽減
が期待できます。
「いびきが気になる」「家族に呼吸が止まっていると言われた」「日中の眠気がつらい」など、少しでも心当たりがあれば、どうぞ一度ご相談ください。
埼玉県志木市の江原耳鼻咽喉科では、在宅での睡眠検査から、CPAPの導入・調整、鼻・のどの治療、生活習慣のアドバイスまで、患者さん一人ひとりの状態に合わせた総合的なサポートを行っています。